恋始終


沈黙が耳に押し寄せてきて、それと同時に頭の中へするりと滑り込んでくる。
脳と混ざり合って、まず聴覚が麻痺し、私は静寂となる。

次は視覚だ。
色彩はあなたに吸い取られ、私はあなたしか見れなくなる。
虹よりももっと色鮮やかで、春の花より繊細かつ優雅なあなた。
私は沈黙となる。

触覚で感じることは全て。
時に残酷。
空気の振動さえも感じ取って、土足でどかどかと勝手に中へ上がり込んできた。
何もかもが鬱陶しい。騒々しい。
私は無音となる。

あなたと同じテーブルで飲む紅茶はするすると味が薄れていく。
時が止まったのか、はたまた急速に進んだのか。
あなたの目は虚ろで、私の手の中にあるのは冷めた味気ない紅茶だった。

言葉は重い枷となって、声まで届かない。
唇は錆びた鎖で、あなたを縛り付けておくには脆すぎた。

時が止まったのか、はたまた急速に進んだのか。

戻らなくて一番悔しいのは、時間でもなくあなたでもなく、
あの時の心弾むときめきだったことに、私はようやく気付いたみたい。

あの一瞬の輝きが、あなたなんかよりずっと眩しかったことに、
今ようやく気付いたみたい。

恋は今終わりを告げた。
そして今私の恋は始まりの沈黙を聞く。