魔王


風が吹く
草木が揺れ、宙は明滅する

嵐がきた

人は恐れ、おののき、泣き叫ぶ
そして祈る。自分たちが犯した過ちに気付きもせず

人が 人が 人が
呑み込まれていく

空が 大地が この世界が
すべて消えていく…


星が次々と暗闇へ溶けていく
雲はちぎれ、結び、膨れていく

嵐が吹く

人は嘆き、苦しみ、泣き叫ぶ
そして気付く。自分たちが呼び寄せたものの存在に


私たちが目指していたものは
いつの間に塵と化してしまったのだろう

私たちが選んだはずの未来は
どこへと消えてしまったのだろう

私たちが明日だと思って掴んだものは
神の手ではなく
魔王の手だった。

嵐は止まない


そして私たちは永遠に何も得られない。