好きだった


この手でつかめると思っていた、全てを
そんな頃が懐かしくて、少し笑ってしまった。
この星空を見つめてると、君を思い出してしまう。
君の横顔を照らしていた星達が、
僕を哀れみの目で見つめ返した。

突き出したこの手で、なぜ僕は君を抱きしめなかったんだろう。
今頃後悔しても遅いのに。
君を想うこの心が憎かった。


ついてでるのは、ため息ばかりで、君への想いじゃない。
愛する心は身体を毒がまわるように隅々まで
いきわたって、僕の身体を蝕んでいく。
君のあの笑顔が、僕の心に刻み込まれている。

駆け出したこの足で、なぜ僕は君を追いかけなかったんだろう。
今頃後悔しても遅いのに。
一瞬でも迷うなんて。


頬をつたう涙が冷たい。
潤む目で見上げた夜空の星達がなんだか憎くて、
ぎゅっと唇を噛み締めていた。
今頃後悔しても遅いのに。
それでも、君を忘れるなんてできなくて。
結局僕は君という迷路から抜け出せていないんだ。

駆け出したこの足で、なぜ僕は君を追いかけなかったんだろう。
君を想う心ばかりが前に出て。
君を不幸にしていたなんて。
気付かない僕は本当に馬鹿だ。

突き出したこの手で、なぜ僕は君を抱きしめなかったんだろう。
君を不幸にするためじゃなく
君を掴むはずのこの手は、
どうしようもなくただぶらりと垂れさがっていて。


星達は僕を見下ろして、僕は星達を見上げて。
頬を伝う滴は君との思い出。

本当に君が好きだった。