あれは夏休み中だった。 私達は遊びに出た。 自転車でいろいろなところへと遊びに行った。 買い物したり、公園のベンチで話し合ったりと、とにかく門限まで遊びほうけるつもりだった。 でも、丁度自転車に乗っていないときだった。 私が石か何かに躓いてこけてしまったのだ。 あいつは笑ったりせずに真剣な顔つきで、血が流れる膝小僧と、手のひらをみた。 そしてあいつは、鞄から絆創膏を取り出した。 「痛いだろうけど、我慢しろよ」 手際よかった。近くの水道で洗ってくれた。 泣きそうになっている私に、家に帰ろうか、とも言ってくれた。 嬉しかった。なんでこいつはこんなに優しいんだろう。 そう思って、また泣きそうになった。 「ありがとう」微笑んでそう言うと、あいつは 「いいんだよ、相棒」 って言ってくれた。白い歯を覗かせて。 あいつとの痛いけど、嬉しい思い出だ。